第15回「メロウ倶楽部講演会」報告
日時: 平成17年12月1日(木曜日) 午後3時〜5時
場所: 学習院・百周年記念館
演題: 「何処へ行く、日本の外交」
講師: 外交評論家 澤 英武 氏
参加者: 29名
澄みきった初冬の空に紅葉が映える学習院の校庭を見ながら、参加者の皆さんは会場に三々五々集まりました。
定刻、この大学の卒業生でもあるあんみつ姫さんの司会、講師の友人であるザックスさんの開会のことばと講師紹介で始まりました。
講演の趣旨
◆ 「何処へ行く、日本の外交」と言うよりは「何処へ行く、小泉外交」とした方がよい
◆ 小泉外交の特色(外交をあまり重要視していない)
- 小泉内閣の歴代の外務大臣(田中、川口、槇村ら)のうち、前2者の女性は外交には素人、やっと専門家の槇村が出てきたら、すぐ、更迭してしまった。
- 総理と外務大臣は一心同体で外国に当たるべきなのに、このように次々と替えていたら外国からの信用がなくなる。(サミットなどでも、毎回顔ぶれが違うと人脈もできない。
◆ 国連安全保障理事会常任理事国立候補問題:日本政府が「勝負」に出た。
- The United Nations を日本では「国際連合」と翻訳されているが、これは誤訳と思う。当時、英米と戦っていた日本、ドイツ、イタリアの勢力に対してできたもので、「連合国」と呼ばれた。
- 従って、戦争に勝った国が、その後の世界をどのようにするかを決める機関なのである。
- 連合国の主要国は、米英仏中ソの5ヶ国である。
- 中国でも「連合国」と言っており、「負けた国が何を言っているか」との考えがある。
- 日本で「国際連合」と訳したため誤解がおきて、「世界平和のため公平な立場でことを処す」という所謂「国連神話」ができてしまったが、本質は戦勝国の集まりであることを忘れてはならない。
- 勝った国が簡単にその権利を譲るわけがない。国連のことを考える時、このことをしっかり認識してスタートしなければならない。
- 戦後50年経過し、その間多くの国が独立し、現在192ヶ国が国連に加入している。「もう、戦勝国、敗戦国の時代でもない」とのコンセンサスができているが、本心は自国の権利を守ることには変りはない。
- 戦勝5ヶ国が「拒否権」を持っているため、どんなに加盟国が増えても、意見を言うだけで決定権がないのを見ても、国連の体質が分かる。
- 今回、日本が常任理事国に立候補したのは、アナン事務総長が「日本は常任理事国になる資格がある」「世界平和のため、多大の貢献をし、経済面でもアメリカについで第2位である。このような国が常任理事国でないのは、むしろ不自然である」と言ったことにはじまる。
- これは日本1国だけでなく、ドイツも同様である。
- それが、各大陸の代表の意味で、インド、ブラジル、アフリカのどこか1国と拡大していった。
- このようになると当然、それに反対する国が出てくる。ドイツにはイタリア、ブラジルにはアルゼンチン、インドにはパキスタン、日本には中国と韓国が猛反対している。
- 中国と韓国が日本に対する反対理由は、経済については言えないので、「日本の過去」を持ち出している。
- その結果、「反日デモ」が各地で起こったが、このデモは後に「常任理事国入り反対」ではなく「小泉靖国神社参拝反対」にすり替わって行った。
- 日本はアメリカに次ぐODA拠出国であることを背景に票集めを考えていたが、「アフリカからも1国」の提案がなされたため、アフリカ票がアテにならなくなった。ASEAN諸国も中国の圧力で賛成票にはならなかった。
- 決定的な打撃はアメリカまで反対にまわった。日本はアメリカには何も工作をしていなかった。アメリカの本心は日本の常任理事国入りには反対ではない。では、それを国連の場で言ってもらわないといけないのである。それを言ってもらうには日本はアメリカに何をすればいいのか、それを聞き出すのが工作であり外交であるが、日本はそれをしなかったと思われる。日本外交が如何におかしいかが、これでもわかる。
◆外交とは
- 日本の外交は表面の建前だけで済ませているが、そんなことでは外交はできない。
- 日本にはスパイはいない。スパイはやってはならないことになっているが、どこの国もやっている。外交はキレイごとではできない。
- スパイをする予算もない。本来、機密費をそのような費用に当てるが、「予算を公開せよ」などと言っているので、それができない。要するに表面の建前論だけである。
- 一方、スパイ罪もない。機密漏えいして捕まっても窃盗罪である。外国で国家機密を漏らしたら死刑である。
- 日米安保条約を締結しているが、日本はアメリカの機密を貰えない。日本に機密を伝えるとすぐよそに漏れてしまうからである。
◆日本の常任理事国入りの意義
- 日本の国連費の負担は全体の20%である。アメリカは23%なので、日米で43%負担していることになる。
- 英仏中ロの合計より日本1国の方が大きい。
- しかし、「負担が大きいからそれに見合う権利をよこせ」と言う次元の低い主張はすべきでない。
- 日本が常任理事国を目指すなら、例えば「核非保有国の代表」と言うようなことを主張し、現在の常任理事国の在り方を問うようなことをしなければならない。
- 「核不拡散条約」は明らかに不平等条約である。核保有国(つまり現在の常任理事国)が「核を保有すること」だけで経費負担が増加するような「核弾頭保有税」を提案するようなことで核非保有国の賛同を得るような活動で「核非保有国の常任理事国入り」の意義を訴えることができないのか。核を持たない国が180ヶ国もあるのである。
◆日本の「常任理事国入り」の今後
- 今回は見送られた。政府には「続けて努力する」と言う姿勢が見られない。これだけ努力したのに、何故あっさりやめてしまうのか。これが日本外交の駄目なところである。
◆中国について
- 中国と今後どのように接するかは人によって異なるが、はっきり認識しておかないといけないのは「共産党の独裁国家であり、そこには自由も人権もない」と言うことである。
- 最近ASEAN諸国に中国が接近し、影響力を強めている。ASEAN諸国は、もともと日本のODAで経済発展を果たしたのである。それが最近では中国の影響力の方が大きくなっている。
- 日本の外務省はこれに対抗して、インド、パキスタン、オセアニアを含めた拡大アジア経済圏構想を提案している。
- しかし、このような大きな動きに対して小泉総理はほとんど関心を示さない。
◆ロシアについて
- この5月、小泉総理はロシアの戦勝記念行事に出席した。これは5月9日ベルリンが陥落したのを記念する行事である。しかし、ドイツは当時、日本の同盟国であり、ともに連合国と戦っていたのである。同盟国の敗戦を記念する式典に日本の総理が出席するという意味を小泉総理は考えていない。
- 日本とロシアの間には国交はあるが平和条約を結んでいないので国境が確定していない。北方4島はロシアが占領したままである。
- 日本はロシアとの協力に関して6項目の行動計画を提示しているが、その1項目に北方領土問題がある。
- つまり、国家にとって最も重要な国境問題を、その他の経済問題と同じ次元の問題と同列にしてしまったのである。
◆靖国神社問題について
- これを「小泉個人の問題」でなく「外交問題」してとりあげるのなら、「他国に言われて取り止めるのは外交の敗北」と捉えるべきであり、個人の信条は別にして、日本国民も、マスコミも外国からの言いなりにならない行動すべきである。
- これを、中国の言いなりになって小泉総理を攻撃するマスコミはおかしい。
- 日中、日韓関係において大きな流れを考える時、「靖国問題は大きな問題ではない」と言う小泉総理の言い分はその通りである。両国がそれを問題にしても「それは内政問題」として問題にしなければよいが、それをマスコミが大きく取り上げるので、相手はそれを手段にしてくる。
- むしろ、これは小泉総理の問題ではなく、国民一人ひとりが考えなくてはならない問題である。
- 国益と国益のせめぎ合い、それが外交である。
◆小泉総理の北朝鮮訪問について
- いやしくも日本の総理大臣が国交のない北朝鮮に行くことはない。総理大臣が訪問して解決するような事がらは、外務大臣が行っても片付くようにしておかなければならない。それが外交である。
- 外国との交渉では絶対に踏み外してはならない「格の相違」がある。小泉総理はそのあたりを全く考えていない。
その後、数多くの質疑応答があったが、これは省略。
最後にKEMAさんから謝辞と閉会のことば、その後全員で記念写真を撮影しました。
なお、先生はスライドを使わず、原稿もないような状態で話されました。上記の◆見出しは、報告者が勝手につけたものです。
(記録:多摩のけん、写真提供:のびさわさん)
講演会 風景
懇親会 風景